盲目の元保護猫「ひな」と私の出会い

元保護猫<ひな>と私の出会い

これから猫ちゃんと暮らしたいと思われている方の中には「保護猫を迎える」という選択肢をお考えの方もいるのではないでしょうか。
ひとくちに「保護猫」といっても、拾われた場所や保護当時の状態など、猫ちゃんのバックグラウンドはさまざま。同じように、保護猫ちゃんと飼い主さんの出会い方もさまざまです。

私は現在、元保護猫の3匹の猫ちゃんと暮らしています。
今回は3匹の中で一番末っ子の元保護猫「ひな」と私の出会いについてお話したいと思います。
保護猫ちゃんにご興味をお持ちの方は、ぜひご覧になってみてください。

河川敷で保護された盲目の猫ちゃん

河川敷で保護された盲目の猫ちゃん

ひなが拾われたのは、東京・下町のとある河川敷でした。
ひなを見つけたのは近所に住む猫友さんです。

「子猫を保護したんだけど、どうやら目が見えないみたいなの」

猫友さんの家に伺うと、そこには茶色の毛並みの小柄な猫が、一生懸命部屋の匂いを嗅いで歩き回っていました。
骨ばった体に小さな丸い頭、ピンピンと左右に揺れる細い尻尾。それが初めて見たひなでした。

後から動物病院に行ってわかったことですが、ひなは生まれつき眼球がない猫ちゃんでした。推定1歳の女の子だとのこと。眼球がない理由も、どうして1匹で河川敷にいたのかも、また盲目なままでどうやって1年間も外の世界を生き抜いたのかも、何も分かりません。ひなはバックグラウンドが謎に包まれた猫ちゃんでした。

当時私の家にはすでに元保護猫の2匹の姉妹がいましたが、ひなの持つ不思議な魅力や可愛さに惹かれ、我が家に迎えようと決めました。

ひなと先住猫たちの出会い

ひなと先住猫たちの出会い

ひなを我が家に迎え、意外にも1番最初に打ち解けたのは元・保護猫姉妹の「梅」と「桃」でした。

自分たちのテリトリーである自宅に突然現れたひなに、最初は警戒していた2匹。ひなは目が見えないため、必要な情報を匂いや音から判断します。そのため、頭をゆっくり左右に振り、フンフンと付近の匂いを嗅ぎながら移動します。普通の猫ちゃんとは少し違うひなの仕草に、梅と桃は戸惑ったようでした。

梅と桃の混乱を予想していたので、しばらくの間ひなを別室に隔離しておく予定でした。しかし、ひなが来てから5日後、私の予想よりもはるかに早く梅と桃はひなの周りにやってきました。
2匹はゆっくりと匂いを嗅ぎ、ひなの仕草を観察。「少し普通の猫とは違うけれど、悪い子ではないみたいだ…」そう判断したのか、威嚇も警戒もせず、同じ部屋でくつろぐようになりました。

目が見えない状態にばかり気を使い、猫ちゃんの本質が見えていなかったのは、人間の方だったのかもしれません。

初めて鳴いたひな

初めて鳴いたひな

我が家に来てから約1ヶ月の間、ひなは1度も鳴きませんでした。
本来猫ちゃんは、猫ちゃん同士で鳴くことはあまりありません。「鳴く」という行為は人間との意思疎通の方法だという説があります。

野良猫生活がおよそ1年あり、また視覚で人間を感知しないひなにとって「人間との意思疎通」の必要がなかったのでしょう。

しかしひなと一緒に暮らし始めて1ヶ月後、ひなが突然鳴き始めました。私がひなの元に行き撫でると鳴きやみます。そんなことが数回重なって、初めてひなが声で私を呼んでくれているのだと気付きました。なんともいえない嬉しさが胸に広がったのを覚えています。

保護猫を迎えるということ

保護猫を迎えるということ

ひなを保護してから5年経ちます。ひなはのんびりとした甘えん坊に成長しました。

人間の腕枕で寝るのが好き、おもちゃで遊ぶのが好き、風の匂いを嗅ぐのが好き…。ひなしか持たない個性を、5年の間にたくさん見つけることができました。

もし5年前、猫友さんがひなを見つけていなかったら。
もしひなが、1年間野良として生き抜けていなかったら。
ひなは今こうして目の前にいなかったかもしれません。

保護猫は、偶然という1つ1つの小さな奇跡が積み重なって繋がった命だと感じます。裏を返せば、どれか1つが欠けてしまったがために失われた命があるということです。

命というのは当たり前に続くものではありません。それは人間も、猫ちゃんも同じです。
もしかしたらあなたの行動が、命を繋ぐひとつの要素になるかもしれません。
保護猫ちゃんの里親になるということは、積み重なった奇跡のバトンをしっかりと繋ぐ、大きな意義を持つ行動だと感じます。

というわけで、今回は「元保護猫「ひな」と私の出会い」の話をしてみました。
参考になれば幸いです。

では、また。

東京都出身。猫3匹と人間1人で暮らす新米ライター。猫ちゃんの魅力にぞっこんな日々を送っています。

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