福岡の猫本専門書店に聞いた猫との向き合い方とは【書肆・吾輩堂店主の猫愛】
福岡県福岡市にある「書肆・吾輩堂」。2013年2月22日に開業した、日本で最初の猫本専門書店です。
猫が登場する本と雑貨が並ぶ、猫愛にあふれたお店を切り盛りするのは店主の大久保 京(おおくぼみやこ)さん。
「猫本専門書店がほしいのに、ないのが不満だった」「猫道を極めた書店にしたい」という大久保さんにどうしてもインタビューしたくて、猫本や保護猫についてあれこれと聞いてみました。
長年の夢が実って猫本専門書店オープン
ーーとても猫愛が伝わってくる書店ですね
小さい頃から猫が大好きでした。だけど、父や祖母が「猫は化ける」と思っていて猫が大嫌いだったので……飼えなくて猫に対する憧れがありました。
ーーなぜ猫本専門書店を開こうと思われたのですか?
本はもともと好きでした。大人になって猫を飼いだして、猫に関する本をたくさん読みたいと思った時に「猫だけの本を集めた本屋があったらいいのに」と感じたことがきっかけです。当時はまだネットが普及していなくて。それから四半世紀経って夢を叶えた、という形です。
ーー最初はネット通販だけだったんですよね
最初は猫専門書店なんて荒唐無稽な……と思っていたので、様子を見るためといい物件がなかなか見つからなかったのでインターネットのみで展開していました。
ーー現在の実店舗はとても素敵な場所にありますね
ここは福岡市内の六本松という市の中心部にありながら、大濠公園という大きな公園や護国神社のすぐ近くにあり、緑豊かで静かな場所なんです。そこに戦後すぐからある昭和のまま時が止まったような長屋の一帯があって、猫がうろうろしてるっていうのも決め手になりました。
▲時には近所をパトロールしている猫たちが来店?することも
ーー外観や店内の什器や装飾など、こだわりを感じます
築50年くらいの二階建ての古い建物なんですが、懐かしい感じがして、人の手の温もりが伝わる、そんなほっとする空間を念頭に改装してもらいました。一階は書籍、二階は畳の和室で雑貨を並べています。
▲暖簾があるので「まるで小料理屋みたいだね」と言われることも
什器は九州大学の戦前から使われている古いものが、大学移転のために不要になり、その散逸を防ぐためにレスキューする「九大什器保全活用プロジェクト」に参加して、お借りしました。
▲あたたかな雰囲気の本棚やテーブル
壁には大好きな小倉織を貼って和モダンの雰囲気に。照明や欄間なども自宅の建て替え時に出たものを使用しています。
▲小倉織が映える和モダンな店内
ーーどんな書籍を扱っているのですか?
猫が登場する小説・エッセイ、絵本、写真集、研究書、美術書、画集、図録など。マンガと雑誌以外のものを扱っています。
ーー猫の飼い主さん、これから猫を飼う人にぜひ読んでもらいたい「おすすめの書籍ベスト3」を教えていただけますか?
・内田百閒『ノラや』
・キャサリン・M・ロジャーズ『猫の世界史』
・坂本千明『退屈をあげる』
ですね。
ーー子供に読み聞かせるのにおすすめの書籍はありますか?
ありすぎて困るのですが……しいて言えば、この3つですかね。
・大佛次郎『スイッチョねこ』
・竹下文子作・町田尚子絵『なまえのないねこ』
・エスター・アベリル『黒ネコジェニーのおはなし』
絵本もたくさんあるので、よかったら以下のページも見てみてくださいね。
猫がくれた出会い
ーーどんなお客様が多いですか?
圧倒的に大人の女性のお客様が多い気がします。実店舗には猫好きのご夫妻だったり、猫の散歩途中の方もいらしたりして、楽しいです。もちろん猫好きの方が99.9%です。時々普通の書店と間違えて入店された方が「猫ばっかり?」とびっくりされることも。
ーーとてもくつろげる店内なので、長居したくなりますね
クラフトビールやワインもお出ししていて、大人がゆっくり楽しめる店をめざしているんですよ。常連のお客様に猫の生態を研究されている大学の教授がいらして、毎回美味しそうにビールを飲んで行かれます。
ーーいままででとても印象的だったお客様とのエピソードを教えてください
そうですね、母の日の贈り物に初任給で猫の花瓶を買われていった若い男性がいて。とっても感動しました。あと妊婦の方が絵本を買われて、お子さんが生まれた時にそれを読み聞かせしている、と話してくださり嬉しくなりました。
▲猫をテーマにした展覧会も年に数回行う
大人気作家・はしもとみおさんの彫刻展風景
それから、毎月必ずはしもとみおさんのフィギュアを買いにおいでになる方もいらっしゃいます。コレクションされているんでしょうね。
ーー猫雑貨も充実していますね
九州の作家さんとコラボして作ったオリジナル雑貨作りに力を入れています。箸置き、お皿、猫の餌皿(獣医さんと相談して開発した吐きにくいもの)、カレンダーや一筆箋、ポチ袋などを作ってきました。いろんな地域のイラストレーターや画家、陶芸家が作っているものや、海外の猫雑貨も直接買い付けを行っています。年に数回、作家さんの展覧会も開催していますよ。
ーーイベントもとても楽しそうです
今年の猫の日は「蚤の市」をして、売り上げをすべて福岡市の「わんにゃんよかネット」に寄附しました。
猫はいて当たり前、猫ファーストな暮らし
ーー大久保さんの猫歴をお聞かせください
小さい頃は猫を飼えず……27年前に初めて飼いました。結婚してすぐ、博多駅で子猫を拾って飼いはじめ、それから路上にいた子猫を拾ったり、人から貰ったりと7匹を育ててきました。現在は4匹の猫と暮らしています。
ーー猫ちゃんはどんな存在ですか?
私にとって猫はいて当たり前の存在。猫アレルギーのお客様もいらっしゃるので、店に猫は出勤しませんが、自宅にいる時はほぼ一緒です。
ーーずっと猫ちゃんと一緒なんてうらやましいです
寝る時も一緒なので、寝返りがうまく打てず常に肩や首が凝っています。整体の先生から「もう猫と寝ないように」と言われてしまいました。寝室から閉め出したこともあったのですが、世にも哀れな声で泣きわめき……戸をガリガリやったので、根負けしました。
ーー甘えん坊なんですね(笑)
自分の人間の子供とは一緒に寝なかったのに、猫とは一緒に寝ています(笑)。うちの息子と娘は生まれた時から猫のお兄ちゃんがいたので、彼らも猫なしの生活は考えられないようです。
ーー猫と暮らす上で気をつけていることはなんですか?
「猫ファースト」。常に猫のことを真っ先に考えてしまいます。火事や災害にあったらどうやって猫を連れて逃げ出そうか、と考えています。そのため『ねことわたしの防災ハンドブック』は参考になりますね。
猫を飼うなら保護猫を
ーーいまは「猫ブーム」といわれていますが、何か思うところはありますか?
そもそも「猫ブーム」という言葉が嫌いです。江戸時代から猫ブームってあったんですけど、今のように異常なものではない。生き物をブームにすることは反対ですね。その言葉に踊らされて安易に猫を飼い、猫を捨てる人がいるのではないかと思うと、一刻も早く猫ブームは過ぎてほしいです。
ーー猫の殺処分は年間3万頭を超えているので何とかしたいと思っています
ペットショップで買うのではなく、里親募集をしている団体や自治体から「家族」として迎えてほしいですね。保護団体の方々は本当に熱心に取り組まれているので頭が下がります。
ーー猫の飼い主さん、これから猫を飼う人に伝えたいことはありますか?
猫は家族の一員です。また猫は長生きすれば20年は生きる動物です。最後まで愛情を注ぎ、一緒に暮らせるかどうかよく考えて飼っていただければと僭越ながら思います。私もそれを常に考えています。
■書肆 吾輩堂(しょし わがはいどう)
2013年2月22日(猫の日)開業。2018年12月よりリアル店舗オープン。facebook、twitter、インスタグラムでは猫本や猫雑貨、展示会のお知らせも発信中。
所在地:福岡市中央区六本松1-3-13
電話番号:092-791-1880
URL:https://wagahaido.com/
■店主 大久保 京(おおくぼ みやこ)さん
4匹の猫と暮らす。旅行会社、美術館、アート系NPO法人を経て、書店経験なしで「書肆 吾輩堂」をオープン。作家さんと一緒に何か素敵な猫の本を出せたらと思っています。
まとめ
とっても猫愛あふれる「書肆 吾輩堂(しょし わがはいどう)」さん。
猫が登場する本を読みたいと思ったら、まず最初にのぞいてみてほしいお店です。現在は臨時休業中ですが、ネットショップで買い物をすることができます。
個人的には「店主の主観」で分類された「猫愛に溢れすぎている本」がとてもツボでした。
というわけで、今回は「福岡の猫本専門書店に聞いた猫との向き合い方とは【書肆・吾輩堂店主の猫愛】」をお伝えしました。
参考になれば幸いです。
では、また。
画像提供:書肆 吾輩堂
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