生活保護を受給していても猫を飼えるのか【飼えます/助成金もアリ】
「生活保護を受給しているんですけど、猫の里親になれますか?」
保護猫ボランティアさんは、時々そんな質問を受けるそうです。答えは「YES」。生活保護を受けているからといって、ペットの飼育を禁止する法律はありません。
しかし、生活保護を受けていると何かと制限があるのは確かです。さらに猫の保護団体が取り決めている「住環境」と「収入」の条件を満たさなければなりません。
猫の里親になれる人が増えるのは私たちの念願です。なので、猫を飼いたい気持ちを精一杯サポートしたいと思っています。そこで、今回はこの生活保護と猫の里親の関係について見ていきたいと思います。
生活保護とは?
「生活保護」とは、事情があって働けない人や収入の少ない人を支援する制度です。健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を促すことを目的としています。
厚生労働省の調査によると令和元年12月時点での生活保護受給者は約207万人、163万世帯となっています。また、以下の図からわかるように、「貯金等の減少・喪失」によるものが最も多く、次いで「傷病による」「働きによる収入の減少・喪失」が多くなっています。
生活保護を受ける条件
・働くことができない
・預貯金、土地、家屋、車などの資産を持っていない
・年金や手当など他に利用できる公的制度がない
・親族からの支援が受けられない
上記の条件をすべて満たし、厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費と収入を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、その差額が保護費として支給されます。
最低生活費は住んでいる地域によって異なりますが、主に食費や光熱費など日常生活に必要な費用(生活扶助)、アパートなどの家賃(住宅扶助)、医療費(医療扶助)、義務教育費(教育扶助)の合算になります。
生活保護を受けることで制限されること
生活保護を受けることで所有財産が制限されます。不動産、自動車、生命保険、宝飾品、贅沢品は持つことができず、ローンや借金、貯金もできません。また、家賃の補助にも制限があるため、住める家にも制限があることになります。また、病院の受診の際は、指定医療機関のみに制限されます。
生活保護を受給していても猫を飼える
生活保護を受けるといろいろな制限はありますが、ペットの飼育については制限されていません。ペットは癒しを与えてくれる存在であり、精神的な支えにもなります。自立の活力にもなると考えられているため、むしろ飼うべきだと思います。
飼育費は支給されないので注意
しかしながら、猫の飼育費は支給されません。エサ代、トイレ砂代、医療費、不妊去勢費用などの費用も通常の生活費の範囲内でまかなわなければなりません。猫ちゃんにかかる費用と自分の生活費を把握し、生活を圧迫しすぎないように注意する必要があります。
犬よりも猫のほうがお金がかからない
一般社団法人ペットフード協会によると、1か月当たりの支出総額は犬の場合は1万368円、猫の場合は6,236円となりました。犬の場合は外出費用や美容費用がかかるため、猫よりも支出が多くなるようです。
参考:一般社団法人 ペットフード協会『平成30年(2018年)全国犬猫飼育実態調査 結果』より
自治体の助成金も上手に活用しよう
自治体によっては、保護猫の不妊去勢手術やマイクロチップ装着に対して助成金を受け取れる場合があります。支出を抑えることができるので、上手に活用するようにしましょう。
不妊去勢手術
不妊去勢手術をすることで望まない妊娠や病気を防ぐことができるだけでなく、マーキング、発情期の鳴き声などを減らすことができます。
不妊去勢手術費用
オスは1~2万円、メスは3~4万円の費用がかかります。保護猫の場合は無料で手術が受けられる自治体もあります。譲渡の際、里親が不妊去勢手術費を負担する必要がある場合もあるため、よく確認するようにしましょう。
不妊去勢手術の助成金
主に保護猫や飼い主のいない猫に対して実施されています。飼い猫の助成も行っている自治体もあるので、住んでいる自治体のホームページを確認してみましょう。
マイクロチップ
ペットの迷子や遺棄を防ぎ、殺処分を減らすために、2019年6月よりマイクロチップ装着が義務化されます。マイクロチップとは、ペットの所有者情報が登録された10mmほどの電子タグで、首の後ろのあたりに注入します。ペットショップにいる子たちには、必ずマイクロチップが装着されています。
マイクロチップの手術費用
動物病院によって異なりますが、約3,000円から5,000円ほどかかります。保護団体によっては譲渡の際にすでにマイクロチップを装着している場合があり、登録料1,000円程度を負担します。
マイクロチップの助成金
マイクロチップ装着に助成金が出る自治体の一例をご紹介します。
●茨城県
公益社団法人茨城県獣医師会が実施。飼い主が茨城県内に在住し、実施期間内に茨城県獣医師会会員の動物病院でマイクロチップの埋込みを実施した犬・猫が対象。先着1,000頭まで。
<助成金額>埋め込み 1頭につき2,000円/データ登録 1頭につき1,000円
<実施期間>今年度は終了
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●神奈川県
神奈川県民(横浜市、川崎市、相模原市及び横須賀市の住民を除く)が飼育している生後6か月齢以上の猫が対象。先着222頭。
<助成金額>2,500円(装着費用の額が2,500円を下回る場合はその額)
<実施期間>令和2年2月12日から3月31日まで
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課題は住環境
生活保護費の「住宅扶助」の項目では、上限はありますが家賃の全額が支給されます。しかし、ペット飼育可の賃貸住宅は家賃や敷金が高く、「猫飼育可」の物件はなかなかありません。
また、保護猫の里親になる際、猫ちゃんの住環境について条件が設けられている場合があります。このあたりをクリアできれば、生活保護を受給していても問題なく猫ちゃんの里親になることができます。
住環境が整わないからといって、無断で飼うことは絶対におすすめしません。万が一、猫ちゃんを手放すことになってしまったら、再び辛い思いをさせてしまうことになります。
まとめ
生活保護を受けているからといって、猫の里親になれないことはありません。
しかし、生活保護費は最低限度の支給になるため、猫ちゃんの飼育費や医療費、保険費を捻出して、本当に生活ができるのかどうかをシミュレーションしてみる必要があります。心配なときはケースワーカーに相談することもできます。
問題になるのは住環境です。猫飼育可の物件を見つけるのは難しいですが、くれぐれも大家さんやケースワーカーに無断で飼うようなことはしてはいけません。
大変なことも多いですが、猫ちゃんとの生活は癒しと力を与えてくれます。生活保護を受けているからといって最初からあきらめてしまわずに、ぜひ可能性を探ってみてほしいと思います。
というわけで、今回は「生活保護を受給していても猫を飼えるのか【飼えます/助成金もアリ】」の話をしてみました。
参考になれば幸いです。
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では、また。
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