猫のTNRってなに?【野良猫の不妊去勢手術のこと/地域猫活動】
公園や街を歩いていると、片耳が欠けたような耳の猫ちゃんを見かけることがあります。ケガをしたのかな? と思われるかもしれませんが、実はそうではなく「不妊去勢手術を受けた飼い主のいない猫ちゃん」という印なのです。野良猫に不妊去勢手術をすることを「TNR(ティーエヌアール)」といい、繁殖を防いで殺処分になってしまう猫ちゃんを減らそうという目的があります。
今回は猫を飼っていない人にもぜひ知ってほしい、猫のTNRという活動について詳しく解説します。
猫のTNRとは
TNRの対象となるのは飼い主のいない野良猫になります。猫ちゃんは非常に繁殖力が強く、子だくさんな上に、1年に何回も出産します。そうなるとどんどん野良猫が増え続け、殺処分されてしまう猫ちゃんも増え続けてしまいます。人間とのトラブルが発生することもあるため、民間のボランティア団体やNPOによってTNRが行われています。
具体的にどうやってTNRを行っているのか?
TNRとは猫ちゃんを捕まえて(Trap)、不妊去勢手術をし(Neuter)、元の生活場所に戻す(Return)活動をいいます。それぞれの頭文字をとって「TNR」と呼ばれています。
Trap/捕獲
猫ちゃんがケガをしないように慎重に捕獲します。捕獲は素手ではなく、お互いの安全のために専用の捕獲器を使用します。捕獲器は動物病院や自治体から借りることができます。捕獲器を設置したら、なかにエサを置いて待機します。捕獲器に猫ちゃんが入ったら、パニックになって暴れてしまいます。すぐに対応できるように、かならず近くで見守るようにします。
Neuter/不妊去勢手術
猫ちゃんが捕獲器に入ったら、TNRに対応している動物病院へ連れていき、不妊去勢手術を行います。また、不妊去勢手術を受けた目印として、耳を少しだけカットします。全身麻酔をかけるので痛みはありません。オスは右耳、メスは左耳をカットすることが多いようです。その耳の形から「さくら耳」「さくらねこ」と呼ばれ、再度、捕まってしまうことを防ぐ役割があります。手術後24時間は動物病院やボランティアさんの家で安静にします。
Return/元の場所に戻す
不妊去勢手術のあとは、元の生活場所に戻して経過観察を行います。不妊去勢手術を受けた猫ちゃんは一般的に糞尿のにおいが少なくなる、発情期の鳴き声が少なくなると言われており、人間とのトラブルを避けながら共生の道をめざすことになります。
TNR後の猫ちゃんはどうなるの?
手術の傷は小さく、安静後はそのまま元の生活場所へ戻され、「地域猫」としてボランティアさんに見守られながら一代限りの生涯をまっとうします。このように野良猫に不妊去勢手術を施し、適切に管理していくことを地域猫活動といいます。
また、すべての猫ちゃんが元の生活に戻されるわけではなく、まだ人間のお世話が必要な子猫ちゃん、ケガをしている猫ちゃんについては預かりボランティアさんによって保護され、ケアを受けたのちに譲渡会などで里親を募集することもあります。
猫のTNRに協力してくれる動物病院は多い
TNR活動を行っているのは主に民間のボランティア団体やNPOです。不妊去勢手術にはもちろんお金がかかりますし、保護した猫ちゃんのエサやトイレも必要です。そのお金はボランティアさん自身が負担することもありますし、無償で手術を行ってくれる動物病院もあります。また、近年では自治体が積極的に野良猫対策に取り組み、補助を受けられるケースも増えてきました。
無料で不妊去勢手術を行う動物病院もある
猫の不妊去勢手術にはオスは1~2万円、メスは3~4万円の費用がかかります。たくさんの猫ちゃんのTNRを行うには資金面での負担が大きかったのですが、TNR活動に賛同した動物病院では無料で不妊去勢手術を受けることができます。
例えば、東京都杉並区にある犬・猫 不妊去勢手術専門のねこけん動物病院では、クラウドファンディングやネットショップでの売り上げを運営費に充てることで、無料で不妊去勢手術を行っています。
また、支援団体を利用することで、無料で手術が受けられるほか、費用の一部を助成している場合もあります。ぜひチェックしてみてください。
公益財団法人どうぶつ基金
公益財団法人どうぶつ基金では、さくらねこ無料不妊手術事業として無料で不妊手術を実施しています。TNR活動を行う団体や個人が利用することができ、事業に賛同した獣医師のもとで無料で手術を受けることができます。
公益財団法人日本動物愛護協会
公益財団法人日本動物愛護協会では、飼い主のいない猫の不妊去勢手術助成事業として、メスの不妊手術は1万円まで、オスの去勢手術は5,000円までの費用を助成しています。手術費用は一旦、自分で負担する必要があります。
猫のTNR専門病院が全国各地に誕生
猫のTNRに賛同する獣医師も数多く、全国各地で飼い主のいない猫のTNR専門病院が誕生しています。格安で手術を引き受けているほか、捕獲からリリースまでのプランニング、里親探しまでサポートしてくれる場合もあり、ボランティアさんの強い味方となっています。
【猫のTNR専門病院の一例】
北摂TNRサポート のらねこさんの手術室
TNR日本動物福祉病院
のら猫クリニック兵庫
さくらねこ動物病院
TNRが増えれば不幸な猫ちゃんを減らせる
環境省のデータによると令和元年度の猫の殺処分数は約3万件、うち2万件は離乳前の子猫となっています。すべての猫ちゃんに安心して暮らせるお家が見つかればいいのですが、それはとても難しいです。やはり、現状でいちばん有効な手段はTNRになります。
自治体も巻き込んで広がるTNR活動・地域猫活動
先にご紹介した『公益財団法人どうぶつ基金』による「さくらねこ無料不妊手術事業」ですが、自治体が行政枠として参画することもできます。自治体がTNRについて正しい知識を得ることはもちろん、自治体の窓口へ申請することで不妊去勢手術を無料で受けることができます。このように自治体も巻き込んでTNR活動は大きく広がり、猫の殺処分件数は減少傾向にあります。
不妊去勢手術をすることで繁殖を防止、殺処分ゼロの実現へ
TNRを行うことで、不幸な猫ちゃんを増やさないようにすることができます。つまり、飼い主のいない猫ちゃんの殺処分を減らすことにつながります。もし、耳がカットされている猫ちゃんを見かけたら、TNR活動、地域猫活動が適切に行われているということです。近所の野良猫の耳に注目してみてくださいね。
まとめ 野良猫と共生するためのTNR
TNRは不幸な猫ちゃんを増やさないための活動であるとともに、人と猫が共存できる社会をめざす活動でもあります。
このようなTNR活動や保護猫活動が活発な地域もあれば、まだまだこれからな地域もあります。いきなりボランティアに参加するのは難しいですが、クラウドファンディングや寄付金付きのグッズの購入など、できることから始めてみましょう。
というわけで、今回は「猫のTNRってなに?」の話をしてみました。
参考になれば幸いです。
では、また。
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