保護した野良猫が弱っていたときの応急手当とは?【動物病院に行けないとき】

保護した野良猫が弱っていたときの応急手当とは?【動物病院に行けないとき】

明らかに弱っている野良猫を見つけて保護した場合、最適な対処法は動物病院へ連れて行くことです。ところが、いろいろな事情ですぐに動物病院に連れていけない場合があります。野良猫が弱っている原因を正しく判断し、適切な応急手当を行うのが重要です。

ここでは、すぐに動物病院へ連れていけないときに、猫ちゃんへできる正しい応急手当の方法を解説しています。弱っている野良猫を見つけたときだけでなく、自宅で飼っている猫ちゃんの不意のケガや体調不良時にも、応急手当方法を知っておくと慌てずに済むでしょう。

すぐに動物病院に連れていけないとき自分でできる応急手当とは

すぐに動物病院に連れていけないとき自分でできる応急手当とは

弱っている野良猫を見つけて、すぐに動物病院へ連れていけないときにできる応急手当を順に紹介していきます。

低体温症の見分け方と応急処置

猫ちゃんの平均体温は37.5~39.0度前後と人間よりも高めになっています。これよりも体温が低い場合の症状として考えられるのが、低体温症です。低体温症は寒さや水にぬれる以外にも、先天性の心臓病、ケガや精神的ショックと原因が多岐にわたります。また、子猫の場合は、大人の猫よりも体温調節がしにくいため低体温になりやすいリスクもあるのです。軽度の場合は自律神経の働きによって自然回復しますが、重度の場合は死に至る場合があります。

急激に猫ちゃんの体温を温めると血の巡りがよくなり、ショック状態になってしまう可能性があるのを覚えておきましょう。応急手当の方法は、まず猫ちゃんの平均体温である38度程度のお湯を洗面器に張ります。猫ちゃんはそのまま入れず、ビニールに入れて濡れない状態でお湯に浸け、猫ちゃんの体を温めてあげましょう。保護するのが難しい場合は、風よけで段ボールや毛布などでくるんであげる方法もあります。

弱っている猫の栄養補給のやり方

空腹や内臓障害によって栄養不足になると、低血糖を引き起こす可能性が高くなります。特に、1歳未満の子猫の場合は6~12時間絶食状態になっただけで低血糖になる場合もあるのです。ほかにも、糖尿病を患っている、過度の運動や興奮状態の後も、低血糖を引き起こします。

猫ちゃんの状態が、ぐったりしていて元気がない、痙攣している、下半身が動かない、意識がない場合は低血糖の可能性があります。低血糖の場合の応急手当は、子猫の場合はブドウ糖液、成猫の場合は消化吸収しやすい食事を与えることです。もしも猫ちゃんが意識を失っている場合には、頬の内側にガムシロップを少量塗る方法があります。

強制給餌が必要なとき

野良猫が弱っているため、とりあえず食事を与える人も多いでしょう。ところが、猫ちゃんの体力が落ちすぎていて食事がとれない場合があります。ほかにも、歯周病や口内炎など口の中が痛い、呼吸器系の疾患や鼻づまりで味が分からないので食べたくないことも。老猫の場合は、代謝や噛む力の低下による食欲不振も原因となります。

上記の原因や理由から食事が取れない場合、そのままにしておくと衰弱して死んでしまいます。このとき必要になるのが「強制給餌」です。強制給餌とは、ペースト上の高栄養価食をシリンジなどを使用して、強制的に猫ちゃんへ食事を与える方法を指します。

強制給餌が必要になる目安は、24時間全く食事を取れていない状態のときです。強制給餌を試す前に、猫ちゃんが食べやすい姿勢となる位置に食事を置いてあげる、スプーンなどで猫ちゃんの口元に食事を運んであげるなどの工夫を行いましょう。固形物が物理的に飲み込めない場合には、固形のフードをお湯やスープでふやかしてやわらかくするか、流動食のフードも試します。

いずれの方法でも食事をせず、強制給餌が必要となった場合、方法は2つあります。

①シリンジなどを使って行う方法

流動食を注入器やシリンジで口の両脇から歯と頬の隙間に流し込んで与える方法です。猫ちゃんが口を開かなくても、口角からならシリンジを差し込めます。上顎に向けて差し入れ、舌の上に流動食が乗るようにして与えましょう。

猫ちゃんが舌でなめるように飲み込むのが、負担を掛けずに与えられるスピードです。もしも猫ちゃんが嫌がって飲み込まない場合は、喉を両手で押さえて、しばらく口先を天井に向けておくと飲み込みます。

シリンジや注入器がない場合は、指で食べさせる方法もあります。右手の人差し指にフードを塗って、左手で猫の口をこじ開けて、口角から押し込み、口先を天井に向けて完了です。

②団子にして与える方法

ウエットフードとドライフードを混合して数時間冷蔵庫で置いてから、スプーンですくい1個あたり2gほどの団子を作ります。片手で猫の上あごをつかみ、もう片方の指で口をあけて舌の上に団子を入れ、その誤水分を5mlほどシリンジで与えます。

怪我、骨折の応急処置

出血している場合、ケガの部分をおさえて止血します。軽度の場合はそのままガーゼなどを当てて3分ほどおさえれば止血可能です。これで止血できない場合は、伸縮しないテープや包帯できつめに巻きつけて止血します。万が一ほかの動物に噛まれたようなケガの場合、エイズや白血病の感染の危険性があるため、できれば傷口をしぼって人間用の消毒液をかけてあげましょう。

ひどく痛がるなど骨折が疑われる場合、応急手当としては安静を保つのが重要です。また、ヒューヒューとした咳をしているときには、胸部が骨折している可能性もあります。出血している傷をなめないように、さらに安静を保つためにもケガをしているときには保定をしましょう。

基本的な保定は、猫ちゃんの前足の間から人差し指を入れ、外側から前足をつかみます。次に反対の手を猫ちゃんのお腹の下から両後ろ足の間に入れて、足の付け根をつかみ、そのまま引き寄せるようにすばやく立ち上がりましょう。

なお、数は少ないですが夜間や休日診療を行っている動物病院もあります。地域で救急診療を行っている動物病院を調べて、連れて行ってあげるのも方法のひとつです。

まとめ

弱っている野良猫を見つけ、すぐに動物病院へ連れていけないときの応急手当方法について紹介しました。あらかじめ応急手当方法を知っておくと対処できますが、野良猫が衰弱している原因を正しく把握するのも重要です。また、応急手当を行ったあとでも必ず動物病院へは連れて行く、緊急性が高い場合は夜間救急の利用も検討するようにしましょう。

というわけで、今回は「拾った野良猫が弱っていたときの応急手当」の話をしてみました。
参考になれば幸いです。

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では、また。

株式会社ぽぽねこ代表取締役。長年、ペット業界に従事。動物愛護団体への寄付を通じて、 猫の殺処分ゼロ活動を支援している。

プロフィール

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