【保護猫の里親インタビュー/アメリカ】ハワイのヒューマンソサエティーで保護猫との出会い、そして家族へ

ペットショップでは生体を販売せず、保護猫を家族として迎え入れる文化が根付くアメリカ。ハワイに移住し、保護猫みそちゃんとの出会い。現地の動物保護施設への訪問、そして家族として迎え入れるときに何を思ったのか。現在もハワイで暮らしているかおるさんに、日本ではあまり知られていない、現地での貴重な体験について語っていただきました。

ハワイへ移住、そして保護猫を迎え入れることに

ーーみそちゃんの里親になった経緯を教えてください

我が猫のみそが家族になったきっかけは、私がアメリカで暮らすようになり、近所のヒューマンソサエティーへ行ったのがきっかけでした。

もともと日本の実家で両親が迷い猫を拾い、情が移って飼い始めたのがきっかけでした。幼いころ、私は動物が大好きだったのですが、親戚の飼い猫に引っかかれた事がきっかけで猫嫌いとなり、猫が苦手になりました。ですが、自由きままで人に媚びない、でも甘えん坊というツンデレな性格に魅了され、猫が大好きになりました。アメリカに引っ越しをして、ようやく生活が落ち着いた頃、昔のように猫を家族として迎えたいと主人に相談し、そこで初めてヒューマンソサエティーの存在を知りました。

ーーヒューマンソサエティーとはどのようなものですか?

主人にすると「それじゃあ、ヒューマンソサエティーへ行こう」と主人が言いました。「ヒューマンソサエティー?」と私は主人へ思わず聞き返しましたんです。主人は不思議そうに「えっ?ほかにどこへ行くの?」と逆に聞かれてしまう始末でした(笑)。

ヒューマンソサエティーとは里親への受け渡しや、野良犬や野良猫、迷子になった動物の保護をする動物愛護団体なんです。
ハワイではHawaiian Humane Societyが代表される動物保護施設で、70名ほどのスタッフと1000人近いボランティアで成り立っています。

アメリカは州によって保護団体は変わりますが、動物は基本的に里親の元へ迎えられる事が前提のシステムになっています。ですからアメリカには生体を販売しているペットショップはほぼありません。ペットを家族として迎えたい場合、最寄りの動物保護団体へ出向くのが一般的です。そしてそこで初めて自分達の「新しい家族」を探すことになるんです。

日本ではペットを飼いたい場合、ペットショップへ行くのが一般的ですよね。保健所でも里親の斡旋はもちろん行っていますが、残念ながらアメリカほど認知されていないようで、毎日多くの尊い命が消えていきます。ですから日本の保健所や動物愛護センターは「殺処分を行う悲しい場所」という暗いイメージが私の中にあり、ずっと拭い切ることができませんでした。

「アメリカの動物保護団体ってどんなところなんだろう?」

移住して2年。ようやく新しい生活の基盤が出来始めていた頃、自分の中でヒューマンソサエティーがどんな施設なのか全く想像が出来ませんでした。日本の保健所や愛護センターのような施設なのだろうか?狭い檻に入れられて、動物達はひしめき合いながら暮らしているのだろうか?「新しい家族」を迎えるワクワクした気持ちと拭いきれない一抹の不安を抱え、ヒューマンソサエティーへ主人と行ってきました。

参考:Hawaiian Humane Society

ーーヒューマンソサエティーに行く前にやったこと、不安だったことはありましたか?

新しい家族を迎える前に、主人と再度話し合いました。猫を飼うと、旅行に気軽に行けなくなる、長期で留守にする際、誰が面倒を見るのか?、物価の高いハワイで定期的に食費や雑費や病院代がかかる、家の家具がボロボロになる、動物の毛で掃除が大変になることについて、じっくりと話し合ったんです。

家族になるという事は最期まで面倒を見るという意味ですから、「可愛いから、欲しいから」という気持ちで尊い命を預かる事はできません。お互いにそれらを再確認をして、それでも家族を迎えたいという意思がある事を話し合いました。

実際に家で暮らし始めてからでないと分からない部分もあります。やはり一緒に暮らすのは難しかったなど、いざというときのために事前に施設のルールをホームページを参考に調べました。Hawaiian Humane Societyのホームページにはこのようなことが書いてあったんです。

  • トライアル期間あり、30日以内なら施設へ戻すことが可能で、手数料も全額返金
  • 譲渡対象の動物は避妊、または去勢手術を受けている
  • マイクロチップが体内に埋め込まれており、迷子になっても飼い主へ連絡が行く
  • ワクチン注射や体調の診断を既に受けている

ヒューマンソサエティーで見た光景とは

ーーみそちゃんとの出会いはどのようなものでしたか?

みそはやっと4ヶ月になったばかりの子猫で、子猫専用の部屋にいました。子猫がもう2匹いて、元気に跳ね回り人に上手に甘える子もいましたし、端でおとなしくのんびりと日向ぼっこを楽しむ子もいました。みそはどちらかと言えば目立たない大人しい子でした。主人がみそをとても気に入り、膝の上で抱っこをすると大人しく抱っこされていて、この子となら家族になれるかもしれないと感じました。

ーーヒューマンソサエティーの光景やそこで感じたことを教えてください

日本の暗い保健所をイメージしていた私は、ヒューマンソサエティーへ行き、そこでカルチャーショックを受けました。
暗く閉ざされ、動物たちの悲しい声が聞こえる場所とは正反対です。
動物たちは明るく清潔で広々としたオープンスペースのケージに入れられ、施設内で働くボランティアと動物が仲良く触れ合う姿や、里親候補と散歩を楽しむ犬もいました。
犬や猫、それ以外の動物(亀やモルモット、ウサギなど)はそれぞれ専用の場所に区切られて生活しています。
周りを見ると小さな子供連れの家族も沢山見ますし、なかには若い女性1人で来ている方もいます。
ハワイはペット禁止のアパートに住む人も多く、ただ動物に癒されに来ている人も多いそうです。
「動物を保護する施設」というとイメージするのが難しいのですが、実際はまるで動物園のようで、予約も不要、誰でも自由に訪れる事ができるオープンな場所です。

ーーヒューマンソサエティーでみそちゃんを選んだ理由を教えて下さい

私は貰い手が難しい大人の猫を選びたかったのですが、主人は子猫から育てたいと言っていました。自分達の家族になるため焦らずに沢山の猫と触れ合い、お互いの相性をみようと可能な限り施設へ通い続け、たくさんの猫達との相性を見てきました。主人はやはりみそを気に入っており、私もみそに情が移りつつありました。主人と休みが一緒になったある日、みそを家族にしようと意見が一致したので彼を迎える準備をし施設へ行ったのですが、一歩の差で他の家族の元へ引き取られてしまいました。2人とも意気消沈して帰ってきたのを今でも覚えています。

その後、他の猫を探していましたがなかなか気に入った猫が見つからず、それでも頑張って施設に通い続けたある日、1匹だけ見慣れた子猫がケージにいました。それがみそでした。

ーーみそちゃんはどんな過去のお持ちでしたか?

みそは一度施設に返されてしまった過去のある猫でした。なので、譲渡証明で仮に付けられる名前が2つあるんです。みそはとても人見知りで淋しがり屋の性格なので新しいご家族の元へ引き取られた時、その方の家で毎日泣き叫んだそうです。小さなお子様がいる家族だったようですが、鳴き声があまりにも大きく、近所迷惑になるからという理由でトライアル期間中に施設へ返されたばかりとボランティアの方が教えてくれました。

ーーみそちゃんを決めたときに思ったこと、感じたことを教えてください

これは運命だと私達は思いました。あと一歩の差で「みそ」を他の里親へ引き取られてしまい、彼を迎えることができなかった事、彼が施設へ戻された同じタイミングで私達が施設を訪れている事。私達は再度お互いの意見を確認し、他の里親へ渡されないよう、その日すぐに里親になる手続きを行いました。

そして、家族の一員に

ーー里親になるまでの流れを教えてください

里親になるにはまず、施設のスタッフへ申告をして、申し込み手続きを行う必要がありました。私達は次のような手続きを行いました。

  • 里親になる申し込み金の支払い$85(子猫の場合)
  • 猫白血球ウィルステスト費用$20(オプション)
  • 住所と電話番号(体内のマイクロチップに登録される為、迷子になっても連絡が行く)
  • 里親になる動物に対しての契約書へサイン(愛情を持って世話をします、相性が合わない場合は施設へ戻します等)

その後、ペット用の簡易的なキャリーに入れてもらえ、1ヶ月分位のペットのご飯や首輪、おもちゃを無料でもらいました。

ーー申し込み〜家庭訪問〜譲渡決定までのエピソードを教えてください

里親の手続きが全て終了するとみそは施設から簡易キャリーに入れられて、ようやく家路に着きました。車で来ていたため、キャリーから大きな鳴き声が聞こえていました。家に到着してまだ不安そうに鳴いていたので、キャリーからは自分のタイミングで出てもらうことにしました。しばらくすると自分で出て、家の中を興味深そうに探検していたのを今でも覚えています。こちらからあまり触れずにみその方から歩み寄ってくれるのを待って触れ合いました。

2日目にはもう色々な所へ自分で行けるようになり、私達にも甘えてくれるようになりました。相変わらず鳴き声は大きかったものの、アパートではなかったので、ご近所迷惑を気にする事なく、寂しそうだったらすぐに寄り添うという事を繰り返す内に、大きく鳴くことは徐々に減っていきました。

ーー我が家に迎えてから現在まではどのように過ごしてきましたか?

今ではすっかり我が家のアイドルです(笑)。

抱っこが嫌いなのであまり抱っこは出来ないのですが、寂しがり屋の性格は相変わらずでいつも側にいます。室内猫ですが、それだけだとストレスが溜まってしまうのでベランダで日向ぼっこをさせたり、体に負担の掛からないリードを付けて外を散歩させることもあります。みそはとても大人しい猫ですが、表情がとても豊かなので彼の表情を見れば何が欲しいのか大抵わかります。

家族の一員として大切な存在です。

全力で愛し、愛されること

ーーこれから里親になるひとにアドバイスをお願いします

里親次第で、その子の一生が左右されます。まずは本当にその子の最期まで看取ることができるのか?幸せになれるのか?をご家族で話し合ってください。私達が利用したHawaiian Humane Societyのルールにもありますが、そういったトライアル期間があるならぜひ利用するのも良いと思います。例えば先住猫や先住犬がいたり、お子様がいたりする場合もあるでしょう。一緒に暮らす全員がその子を迎え、お互いに幸せになれるのか?それを確認してください。もし駄目な場合、施設へ戻すことは決して悪いことではありません。私達のように次の新しい家族に会えるチャンスがあるのですから。

そして全力で愛し、愛されてください。

飼い主:かおる
アメリカ・ハワイ州在住|猫飼育歴:10年
猫に魅了され、愛猫「みそ」に癒やされる日々を過ごす。日本とアメリカの動物保護の認識の違いにカルチャーショックを受け、殺処分ではなく、保護と譲渡前提で動物と共存するアメリカのシェルターの仕組みを日本の方たちにも知って欲しいと語る。

愛猫:みそ
猫種:ミックス/男の子
年齢:4歳
好きなもの:またたびの入ったバナナのぬいぐるみ
特徴:表情豊かで何を考えているかわかるところ

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